スナップショット：ケイマン株主間紛争における中間救済

ケイマン会社はホールディング会社として設立されることが多く見受けられることもあり、紛争解決チームは株主間紛争の傾向を継続的に観察しています。株主間紛争は、一般的に、会社の管理にかかる多数派株主と少数派株主の認識の違いを理由に発生します。特に、一方の株主がその会社の管理を掌握している場合に、その傾向は顕著なものとなります。

ケイマン諸島における株主間紛争

株主間紛争は、通常、公正かつ衡平による請願の提出、株主代表訴訟、またはより限定的な状況下において個人への直接請求に帰着します。

公正かつ衡平による請願

英国法またはBVI法と異なり、ケイマン諸島の会社の株主はケイマン諸島の大法院に対し「不当な利益侵害」を理由とする訴訟を提起することができません。代わりに、会社法は、株主が公正かつ衡平を理由とする会社清算の請願を提出することができると定めています。この場合、裁判所は次のような会社清算以外の代替的な救済措置を命じることができます。すなわち、(a)会社業務の今後の運営方法の規律、(b)請願者が指摘する一定の行為の不実施もしくは停止または請願者が実施されなかったと指摘する行為の実施、(c)会社名義で会社を代表して民事手続を遂行する権限の請願者への付与、および(d)社員または会社自身による他の社員の株式の買取といった命令があります。

株主代表訴訟

会社に対する不正行為が行われた場合、例えば不正行為者が会社の支配権を握っており会社による訴訟提起を阻止できる場合には、会社に代わって株主が不正行為者に対する株主代表訴訟を提起することが可能です。

個人請求

会社に対して不正行為が行われたと主張する法的手段においては会社自身が適切な請求権者であり株主ではないことを示したFoss v Harbottleルールは存在するものの、株主個人に対して不正行為が行われた場合には、株主は当該不正行為者に対して、特定の状況の下、個人請求を行うことができます。

利用可能な中間救済措置

株主間紛争でみられる一般的な中間救済措置には、禁止命令、暫定清算人および訴訟の停止があります。

禁止命令

資産が費消されるおそれがある場合や株主および/または会社が被害を受けた株主にとり不利な手段に及ぶおそれがある場合に、禁止命令による救済措置が適切と考えられます。例えば、提示された資産の会社による売却の阻止または新株の発行（被害を受けた株主の株式価値の希薄効果を有しえます）にかかる禁止命令があります。禁止命令は、会社に対して、被害を受けた株主を特定の意思決定に関与させることを求めるものでもあります。

暫定清算人

暫定清算人は、公正かつ衡平を理由とする会社清算の請願において、清算命令を出すための表見上の根拠が認められる場合にあり、また、会社の資産の費消や乱用、少数派株主の抑圧または会社の取締役の不適切な管理や不正行為を防止する必要があると認められる場合に、「闘争場所の監視」をする暫定清算人を任命することができます。裁判所は、請願にかかる審理が行われている間、会社の資産が適当に保護されることを確保するために、暫定清算人に対して、財産の費消、乱用、散逸、誤用、不適切な管理、不正行為を防ぐのに必要かつ適当と考える権限を与えることができます。

停止

公正かつ衡平による請願や他の株主請求に対しては法的手続の停止を求めることが可能です。そのような停止は、会社の定款や株主契約に含められうる仲裁合意に基づいて、仲裁のために求められる可能性があります。枢密院司法委員会は、最近、FamilyMart China Holding Co Ltd v Ting Chuanにおいて、公正かつ衡平による請願は、根底的な事項が仲裁によって決定されるまでの間、停止することができるとの判断が示されました。

上記に加えて、公正かつ衡平による請願は、会社の定款や株主間契約において非請願条項が設けられている場合には、棄却申立の対象になる点は留意が必要です。

本トピックに関する詳細については、是非紛争解決チームにご連絡ください。

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